大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)858号 判決 1961年11月24日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人森有度の上告理由は、本判決末尾添付の別紙記載のとおりである。

右上告理由第一点について。

昭和三三年六月一一日の原審口頭弁論において、本件当事者双方がそれぞれ論旨摘録のように陳述していることは、記録上明らかである。それ故、被上告人は、本件土地が訴外河口潜蔵から訴外寺崎喜芳を経て被上告会社に順次売渡され、上告人ら主張のような各登記がなされている事実を認めると共に、これと相容れない従前の主張、すなわち、本件土地は前記訴外河口潜蔵から被上告会社に直接売渡されたもので、訴外寺崎喜芳名義に所有権移転登記がなされたのは錯誤による旨の主張を撤回したものと認めるのが相当である。

また、所論訂正付加は、当事者からそのような訂正付加の主張があつたことを摘示した趣旨ではなく、原判決が第一審判決事実摘示を引用するにあたり、明らかな誤り或は不十分な判示を是正したものにすぎない。

それ故、原判決には何ら所論のような違法はなく、論旨はすべて理由がない。

同第二点について。

論旨中、本件土地が訴外河口潜蔵から直接被上告会社に譲渡されたものであることを前提とする所論は、原審の適法に確定した事実と相容れない事実に立脚するものであるから、いずれも採用できない。

次に、原審が適法に確定したところによると、本件土地は訴外河口潜蔵から訴外寺崎喜芳へ、同訴外人から更に被上告会社へと順次譲渡されたものであつて、上告人近森茂は右土地が訴外河口潜蔵所有であつた当時同訴外人からこれを賃借し、該地上に本件建物を建設所有して来たが、右建物の保存登記は、本件土地に対する訴外寺崎喜芳の所有権取得が登記された後に初めてなされたというのであるから、訴外河口潜蔵と同上告人間の本件土地賃貸借は、これを以て土地譲受人たる訴外寺崎喜芳に対抗することができず、従つて同上告人は、同訴外人の本件土地譲受以後は同訴外人およびその譲受人たる被上告会社に対する関係においては借地権を有しないものといわざるを得ない。然りとすれば、上告人らは、たとえ訴外寺崎喜芳から被上告会社に対する本件土地の所有権移転登記が欠けていても、その欠缺を主張する正当の利益を有する第三者にあたらないと解すべきであつて、この点に関する原審の判断は正当であり、論旨は理由がない。

同第三点について。

原判決が適法に確定した事実関係のもとにおいては、被上告会社の本訴請求を権利乱用と認めなかつた原審の判断は正当である。論旨は理由がない。

よつて、民訴三九六条、三八四条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例